離婚してからもう6年の歳月が流れた。
「彼氏はいないんですか?」と聞かれると、「うん、いないよ。というか、作らないようにしてるの」と答える。
小学生だった長男が今年、高校生になり、次男は中学三年生になった。
これまで、公的援助を受けることもなく、生活のために昼も夜も、土日もなく無我夢中で働いてきた。というと、とても悲惨な生活を想像されるだろうが、会話の多い日本一明るい母子家庭だと自負している。
今日も夕食時に子どもたちは、どちらが話の主導権を握るかで揉めていた。
「お前の話は長いんだよ。次、俺にしゃべらせろよ」「もうちょっとだから待ってよ。それでね、〇〇先生がね、××君にさ……」「早くオチ言えよ。つまんねぇんだよ。お母さん、今日ね……」「まだ俺がしゃべってんだろっ。ちょっと待ってろよっ」ってな調子である。私はそれぞれに相槌を入れて、目を見ながら話を聞く。私にとってはこの上ない幸せを感じる時間である。
この母子3人水入らずの場面に、突然子どもたちの見知らぬ男性が入ってきたらどうなるか。すでに思春期にさしかかっている子どもたちのこと。きっとかなり動揺してしまうだろう。
長男にちょっと意地悪な質問をしてみた。
「お母さん、もう疲れちゃったな。誰か金持ちと結婚しちゃおうかな」
すると、即座に彼はこう言った。
「俺、その日に家出して、そのまんま帰って来ないからね」
ナイーブな長男のこと、想像した通りの返事が返ってきた。
次男はこう言った。
「ん〜、俺もちょっと嫌だな。俺たちがさ、大人になって、自分たちで生活できるようになったら、お母さん、好きにしていいよ」
こんなかわいい子どもたちを苦しめるのであれば、私は再婚なんかしない。
ということは、恋愛もご法度。子どもたちを放っておいて、彼氏のところにいりびいたりなんてことはできない。
だから私は恋愛はしない。
あ、これでは第1話で終わってしまう。以上は建前の話で、実はもっと本当のわけがあるのだ。
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