チューリップの名曲、『虹とスニーカー』の一節に、「わがままは男の罪」とあるが、男の我がままを、女はどれだけ許すことができるのだろうか?そして、許してはいけないのだろうか?
私が最初に付き合ったのは、友達の8m/m映画制作で知り合った一つ年下の男の子。彼は映画俳優志望のフリーター。夢はデカイが金は無い。風呂無しの共同アパート暮らしだから、デート代はいつも私のおごりで、食費に電話代、時には家賃の一部も。私がいなけりゃどうするの?
でも、「こんな俺でごめんな。」なんて上目使いに潤んだ目で言われてごらんなさい。女だって若いうちはリスキーな男に弱いもの。ましてや「絶対有名になるから!そしたら、ビバリーヒルズは無理でも、ロスにサンテラスの付いた家を買って一緒に住もうぜ!」なんて言われたら、よっしゃ!私がコイツを何とかしてやらねば、という気になってしまうではないか。
だが、コヤツ、私一人にそのクサイ芝居を打っていたのではなかったんである。彼の下宿の近所に住んでいる後輩が「○○君たら、腹減った〜って電話してくるからシチューつくってあげたんですよ」と言うのを聞いて、え?と思った矢先、引っ越しするから、しばらく会えないとの電話。1週間後、今度は別の友達から「ごめんなさい!悪いってわかってはいたんだけど、俺、淋しいよおって、びしょ濡れでドアの外に立ってるだもん。私も可愛そうになっちゃって」と、彼と同棲していることを泣きながら告白されるに及んで、やっと私も気がついた。彼は「捨て猫男」なんだって。
ミャーミャーと哀れっぽく泣いてすり寄っていけば、大概の人は餌をくれて、一晩の寝床を提供してくれる。でも、野良は誰のものにもなりたくないから、気紛れにふいっと出ていってしまう。現に、彼は彼女の部屋からも鍵だけ残して、突然姿を消した。3日後、彼のシャツが彼女の女友達の部屋の窓に干してあったそうな。
このタイプの男に溺れないためには、一つしか手だてがない。それは「同情しないこと」。恋と同情を見間違うと、泣きを見るのは必ず女。風の噂では、彼はいまだに役者じゃ売れてないけれど、それだけは名演技で、やさしい飼い主を渡り歩いて暮らしているらしい。
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