2006年 バレンタイン特集号 恋マガスタッフの“クリスマスの思い出

 ■ バレンタインの失敗 ( アン )

バレンタインデーが近づくと、いつも高校時代のことを思い出します。
高校一年のとき、私は、ある同級生に憧れていました。

その彼は、とてもギターが上手で、バンド活動をしていて、ほっそりとしていて、茶色いさらさらの髪をしていて、家はお金持ちで。

まるで、少女マンガに出てくるようなタイプの人でした。

でも、当時の私は、男の人とうまく話せず、もちろん、好きな人と話すことなんて、まったくできなかったんですよね。

そんなわけで、いつも、彼を遠くから見ているだけ。
おなじクラスになったこともあるくらい近くにいたのに、彼はいつも遠い存在でした。

それなのに私は、彼にプレゼントをあげるようになったのです。

最初にプレゼントをあげたのは、たしか、高校二年のときのバレンタインデーのときのことだったと思います。
前日に彼に電話をかけて、バレンタインデーに学校の体育館の入り口まで来てもらい、彼にプレゼントをあげたのです。

何をあげたのかは、実はよく覚えていません。
手編みのセーターだったのか、ギターのストラップだったのか……。

とにかく私は、そのバレンタインデー以来、誕生日やクリスマスなど、イベントごとに、その彼にプレゼントをあげ続けるようになりました。

その結果は……言わずもがなです(笑)。

親しくない人に、プレゼントをあげすぎてしまいますと、ますます距離ができてしまいます。
告白してしまうと、さらに距離ができてしまいます。

これから親しくなりたい相手には、義理チョコをあげるくらいがちょうどいいのです。
告白する前に、会話をしたりメールをしたりという関係になっておくほうがいいのです。

そろそろバレンタインデー。
告白しようとしている読者のみなさま。
どうぞ、私とおなじ失敗をしないでくださいね(笑)。

好きな人とまだ親しくなれていないなら、今年のバレンタインデーは、とりあえず友達になるきっかけづくりをする日と位置づけてみてはどうでしょうか。

年に一度のバレンタインデー。効果的に使いましょうね!

■ そろばん塾の先生から…… ( みき )

バレンタインデーは、私が小さい頃からありました。
しかし、私が初めて体験したバレンタインデーは、なんと私がチョコレートをもらうことができたのです。

30年ほど前、空前のそろばん塾ブーム。
小学生の私たちは、学習塾ではなく、そろばん塾に通うのが流行していました。

だから、さっき学校で別れた友達とそろばん塾に行くとまた会えたし、学校で大騒ぎする男子たちともそろばん塾でまた顔をあわせるのでした。
学校と同じ風景が繰り広げられるそろばん塾。

30代半ばと思われる女の先生もさぞ手を焼いたことでしょう。

なかなか落ち着かず、立ち上がってわめく子たちを、先生は容赦なく大声でしかりつけ、教室じゅうを静かにさせるのがとても大変そうでした。

しかし…ある日。
先生がなんだかよそよそしい感じだったのです。
それは…チョコレートでした。

そろばんの授業が終わった時、
「みんなにバレンタインのチョコ、あるよ!」
と言いながら、先生は照れくさそうに私たち1人1人に不二家ハートチョコレートを配ってゆきました。

ハート型で、ピーナッツがびっしりつまったチョコ。
それは、思いがけないビッグプレゼントでした。

日頃イタズラばかりの男子も急におとなしくなり、
神妙な顔で、先生からチョコを受け取っていました。

ああ、懐かしい。
急に、不二家ハートチョコレートが食べたくなりました。

■ 男友達への告白  ( ミワ )

初めて“真面目”にチョコレートをあげたのは、中学3年生のときだった。
彼の家まで行って、彼を呼び出して、正面切って言った。
……すきです。

そして、彼にチョコレートを押し付けると、わたしは返事を聞かず、逃げるように走り去った。

それから数日後、彼からの手紙が届いた。

「姉貴のレターセット(カワイイなー)を盗んで書いています」
という言い訳から始まったその手紙には、わたしの「すきです」に対する返事の代わりに「高校受験がんばれ」とお守りが入っていた。

一つ年上だった彼の通っている高校に、4月からわたしも通うはずだった。

そして、4月。
彼とわたしは同じ電車に乗り、違う駅で降りる日々が始まった。

そう、わたしは彼と同じ高校には行けなかった。
わたしが受験した高校は、彼の通っていた高校じゃなかったらしい。
マジかよー!(涙)

あれから長い時間が過ぎて、わたしたちは今でも仲良しだ。

実は、付き合ったことは一度もない。
「すきです」の返事すらも聞いていない。

でも彼は、いつでもほどよくいい感じでわたしの人生に関わっている。

知り過ぎないから、馴れ合わない。
馴れ合わないけど、よく馴染む。

甘やかな口づけや、息が詰まるような濃密な時間はなかったけれど、日向の昼寝に飽きた呑気な猫の気分で「ちょっとかまっておくれ」とゴロゴロすり寄れる気安さは、恋愛では手に入りにくい貴重な関係だ。

女が正面切って男の子に告白するのがバレンタインデーなら、口説くのは何も、本命の男じゃなくてもいい。
恋人には見せられないダメな自分をさらけ出せる“駆け込み寺”のような男友達に、

――いつか、うっかり恋するかもしれないけど、いつまでも美味しいお酒が飲める関係でいよう。

なんていう告白もアリ。

チョコレートの甘さよりおせんべいの香ばしさがしっくりくるようなお醤油味のバレンタイン。
大人の女にだけ許された特権だ。

※このコラムはほぼ「恋マガジン」配信当時の内容です。
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