私が恋をしない理由  - Essay - vol.1  …by笠松ゆみ

■ プロローグ

離婚してからもう6年の歳月が流れた。
「彼氏はいないんですか?」と聞かれると、「うん、いないよ。というか、作らないようにしてるの」と答える。
小学生だった長男が今年、高校生になり、次男は中学三年生になった。
これまで、公的援助を受けることもなく、生活のために昼も夜も、土日もなく無我夢中で働いてきた。
というと、とても悲惨な生活を想像されるだろうが、会話の多い日本一明るい母子家庭だと自負している。

今日も夕食時に子どもたちは、どちらが話の主導権を握るかで揉めていた。
「お前の話は長いんだよ。次、俺にしゃべらせろよ」
「もうちょっとだから待ってよ。それでね、〇〇先生がね、××君にさ……」
「早くオチ言えよ。つまんねぇんだよ。お母さん、今日ね……」
「まだ俺がしゃべってんだろっ。ちょっと待ってろよっ」ってな調子である。
私はそれぞれに相槌を入れて、目を見ながら話を聞く。
私にとってはこの上ない幸せを感じる時間である。

この母子3人水入らずの場面に、突然子どもたちの見知らぬ男性が入ってきたらどうなるか。
すでに思春期にさしかかっている子どもたちのこと。
きっとかなり動揺してしまうだろう。

長男にちょっと意地悪な質問をしてみた。
「お母さん、もう疲れちゃったな。誰か金持ちと結婚しちゃおうかな」
すると、即座に彼はこう言った。

「俺、その日に家出して、そのまんま帰って来ないからね」
ナイーブな長男のこと、想像した通りの返事が返ってきた。
次男はこう言った。
「ん~、俺もちょっと嫌だな。
俺たちがさ、大人になって、自分たちで生活できるようになったら、お母さん、好きにしていいよ」

こんなかわいい子どもたちを苦しめるのであれば、私は再婚なんかしない。
ということは、恋愛もご法度。
子どもたちを放っておいて、彼氏のところにいりびいたりなんてことはできない。

だから私は恋愛はしない。

あ、これでは第1話で終わってしまう。
以上は建前の話で、実はもっと本当のわけがあるのだ。

【プロフィール】
笠松ゆみ(かさまつゆみ)
SOHOWORKネット代表シングルマザー歴5年。
高校1年、中学3年生の息子と東京都内に在住。

 
※このコラムはほぼ「恋マガジン」配信当時の内容です。
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