ニューヨークのハーレムに、以前こんな広告が貼られていた。
バカルディというラム酒の広告で、写真は人気ラッパーのファットジョー。
キャッチコピーは「STILL REAL. LIVE LIKE YOU MEAN IT」。
――いまだにリアル。思うままに生きよ。
そのときわたしは男友達と一緒に歩いていて、二人とも広告を目にしてふと足を止めた。
早春のニューヨーク。
お互いにちょうど恋がうまくいかず、毎晩お酒を飲んでは、「俺たちの春はどこだぁぁ」と、ままならない人生を嘆いていたときだった。
人の気持ちはどうしてあっさり変わってしまうんだろう。
二人で始めたことなのに、どうして一人勝手に終わらせちゃうんだろう。
思い出の尻尾をつかんでは自分たちの恋を振り返り、「もうあんなタイプはこりごり」「結局、合わなかったんだよ」と、恋の終りを認めることにずいぶん時間を費やした。
負け惜しみとヤケクソの間に「もう一度会いたい」という本音を隠して。
ハーレムで広告を見たわたしたちは、不思議なことに、二人同時に同じことを考えていたらしい。
終わった恋をジグソーパズルのようにもう一度バラバラにして、あたまの中で自分の好きなように作りかえる。
恋人だった人に対する“なぜ”ばかりにこだわっているうちは終わってしまった恋の呪縛から逃れられない。
いくら考えても、相手の本当の気持ちなんて分かりっこないから。
答えの出ない問いを考え続けてしまうのは虚しい。
相手のことより、自分に“なぜ”を問いかけたほうがいいんじゃないの?
LIVE LIKE YOU MEAN IT.
「……だよな。結局は」
「……自分次第ってことだよね」
恋愛ノウハウも、恋がうまくいく小ワザも、モテるテクニックも悪くない。
でも、究極は“自分をよく知る”こと。
恋をして、「あぁ楽しかった」「いい経験だった」だけじゃゲイがない。
何が大事で、何が好きで、何が苦手で、何がほしいかを学ばなくちゃせっかく恋したのにもったいない。
結婚を意識するならなおさら、自分がどんな人間かを分析してから相手を“選ぶ”。
「あなたらしく」なんて他人の評価に惑わされたら、かえって混乱する。
だから、自分を知って、思うままに生きよ。
思うままに人を好きになればいい。
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今までありがとうございました。
またどこかでね。チャオ~ (ミワ)
※このコラムはほぼ「恋マガジン」配信当時の内容です。
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