ニューヨークのメイシーズの1階にコスメティック売り場がある。
シャネルの斜め向かいにあるイヴ サン ローランに行く機会があれば、化粧品よりも、そこにいる男性販売員に注目してほしい。
彼は、ものすごくキレイな顔をしている。
彼はわたしがつけていたリップグロスを見て、「この色が好きなのかもしれないけど、好きな色と似合う色は違うんだよ」と、わたしに“似合う”色のグロスを選んでつけてくれた。
「女性は存在自体がビューティフルなんだから、もっと自分をケアしてあげなくちゃ」
そんな言葉は美容液よりも女をキレイにする。
「これからどこに行くの?」
「男の子に会いに行くの」
わたしの言葉に彼は、「それは大変。こんなメイクじゃデートが盛り上がらないよ」
大げさなくらい肩をすくめてジョークを言うと、わたしの適当なメイクをデート用にバージョンアップする。
「顔にメイクするってことは、心にもメイクするってこと。デートの前にはハートもバラ色にしなくちゃね」
わたしは彼が選んでくれたリップグロスを買うことにした。
“TOUCHE BRILLANCE” SPARKLING TOUCH FOR LIPS #8
細かいラメがくちびるをふっくらと見せる上品なベージュのグロスは、ケチらずにたっぷりつけるのが男の子のキスを誘うコツ。
待ち合わせ場所に着く頃には、ほどよくくちびるに溶けて男の子の顔をラメだらけにすることはないから安心して。
これ、ちゃんと確認済み(笑)。
その日のメイクに使った商品の説明を彼がしてくれたけれど、わたしは彼の顔ばかり見つめていた。
「ごめんね。あなたがあまりにもキレイだから見とれて聞いてなかった」
そう言うと、彼は長くて濃いまつげをパタパタさせながら思いっきりチャーミングな笑顔で「サンキュー」と照れて笑った。
メイシーズのサン ローランに行く機会があったらハートをバラ色にしてくれる彼に、一度メイクしてもらうといい。
でも、ナンバー8のグロスで彼のキスを誘うのはムリみたい。
彼は、間違いなくゲイだろうから。
※このコラムはほぼ「恋マガジン」配信当時の内容です。
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