「私、浩二がでかけるといつもこっそりつけるようになったのね。今夜こそ違うだろう、もしかしたら違うだろうと思っても、浩二は毎回その女の部屋へ行く。次第に怒りがこみあげてきて、今度は、浮気相手に毎日数え切れない無言電話をかけるようになって。彼にばれたら嫌われることはわかっているのに、どうしても止められなくなってしまったんです」
ある夜、浩二さんから問いつめられ、沙耶香さんはストーカー行為を白状することに。とうとう、浩二さんは部屋を出て浮気相手の彼女の部屋に転がり込んでしまった。
「でもね、彼は私を許してくれた。俺も悪かったと言って、時々戻ってきてはまたどっかに消えていくという日々が続きました。私も、ストーカーはやめて、時々帰ってくる彼を楽しみに待つようになったの。でも、そんな生活が続くわけないわよね」
ひどい円形脱毛症。仕事も休みがち。このままじゃ、自分がおかしくなってしまう。日常もままならなくなった彼女は、自分から別れを告げた。
「そのあと彼は、例の浮気相手とすぐ別れたみたいなのね。別の女性とできちゃった結婚したらしいの。たまに電話がきて、今も二人で飲んだりするんです。彼の奥さんね、専業主婦なのに毎日ご飯を炊かないんですって。レンジでチンしたご飯を食べてるんだ、なんて話を浩二から聞くと、腹立たしくて。浩二にちゃんとご飯作りなさいよって、奥さんに説教したくなっちゃう。私は、どんなに忙しくても毎日ご飯を作ってあげていたもの」
いちばん大事なのは、彼。どんな男よりも。
「今つきあっている恋人はいい人だし、奥さんと別れるから結婚しようって言ってくれる。でも、浩二じゃなきゃ嫌なの。手に入らないから、いつまでも追いかけちゃうのかも知れません」
浩二さんとはセックスレス。家族のような友人のような関係。沙耶香さんは、「優しい恋人」とのセックスの最中は、いつも浩二さんを想像しながら抱かれていると言う。
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