「もう彼とは3年間同居しています。お互いの両親の了承も得た上で同居していますから、同棲というよりも事実婚という感覚ですね」
都内在住の美樹さんは30歳。大学卒業後に広告代理店勤務を経て、2年前に独立。広告制作会社を設立した。この不況の中経営は上々。会社勤め時代の人脈で仕事はひっきりなしに入ってくるそうだ。独立の1年前から、3歳年上の現在のパートナーと一緒に住み始めたわけである。
「彼も会社経営者。私たちはお互いに仕事に夢中なので、子供は作らないと思います。二人が心地よく暮らす環境はすでに整っていますし、入籍する必要を感じないんです」
実は美樹さんはバツイチ。OLだった6年前に同じ会社の同僚と入籍したのだが、わずか半年で破局してしまったのだ。「やっぱり元の彼女の方が好きなんだ」と泣き崩れる元のご主人を引きとめもせず、慰謝料ももらわずに離婚届に判を押したという。
「だって、人の気持ちだけはどうしようもないじゃないですか。でね、その時に思ったんです。籍を入れたからって、人の心は束縛できないんだって。そんな当り前のこと、気づくのが遅すぎたと思うんですけど」
恋人と自分との関係を「安定させる」ために入籍する人達がいる。だけど、美樹さんは、入籍しても男女の関係はけして安定などしないのだと身を持って体験したのである。現在のパートナーもバツイチ。美樹さんと同じように、入籍の無意味さを感じているという。
「人と人が心だけでつながるのが、すごく自然なカタチだと思いませんか? もし自分が子供を産むとしても、二度と入籍はしないと思います。国や世間に認めてもらうために彼と暮らしているわけではない。彼との毎日が楽しいから、彼が自分にとって必要な人だから一緒にいるだけですから」
毅然とした表情で、美樹さんはきっぱりと言いきった。誰にも流されない。他人に何も求めない。そんなすがすがしい生き方は、とても魅力的に私の目に映った。
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