1度は別れた恵美さんと裕二さん。そのまま別れていたら、何の問題もなかったのだ。ところが、別れて3年経った頃、すでにカウンセラーに転職していた恵美さんは、ふと彼に電話をしてしまった。
「彼、奥さんに逃げられて離婚して落ちこんでいたの。相手がお金持ちのお嬢様だったでしょ。価値観にギャップがあったみたいでね。久しぶりに会って食事をしたの。そうしたら一緒に住まないかって言われて。彼、神経症みたいだったし、そばにいてあげようと思っちゃったのよ」
未練いっぱいの恵美さんにしたら、裕二さんからの同居の申し入れは、スゴク嬉しいことだった。言葉では確認しなかったにしろ、「いつかは彼と結婚するのだろう」と思いこんでいた。まさか裕二さんが、恵美さんを単なる同居人として扱うとは思ってもいなかったし、同居から3年後には、13万円の家賃をすべて肩代わりするとは思いもしなかった。
「最初はセックスもなかった。しばらくして、私が、まだ好きだって伝えたら驚いていたもの。まあ、その後、なんとなくセックスはするようになったけど、今の関係が恋人って呼べるのかどうか…。生活費はすべて私が払っているの。彼は、私がいなくなると生活がなりたたなくなるから、優しくしてくれる。私、休みもなく働いているんだけどあんまりにもお金がなくって、またSMの女王様の仕事をしようと思っているの。でも、もう年だから雇ってもらえないかもね(笑)。いつまで続くのかなあ、こんな生活」
裕二さんは今、ほとんど仕事をしていない。ミュージシャンも辞めた。月にほんの数日アルバイトをして稼いだお金で、女に会いに行く。恵美さんは、ただ、じっと部屋で待っている。同居して5年間、ずっとそんな調子なのだと言う。早く別れればいいのに。私は、恵美さんの話に、だんだんイライラしてきてしまった。
裕二さんは、ズルイ男だと思う。だけど、それにはまっちゃった恵美さんも恵美さんなのだ。女には、恋をつかむ女とつかめない女がいる。それは多分、誰のせいでもなく、本人の性質の問題ではないか。ダメな男ばかりを好きになる女がいる。恵美さんも結局、ダメな男が好きなのだ。顔立ちが整っていて心の優しい恵美さん。でも、今は膚も心もボロボロだ。早くハッピーになって、美人顔に戻って欲しい。
|