ぼくの名は皐月けんた。28歳、独身。
単刀直入にいえば、ぼくは浮気症だ。浮気性ではない。ほとんど病気なので浮気症なのだ。
人から愛されたいぼくは、愛されていることを確認したくて、いろいろな女の人と寝てしまう。話をして、お酒を飲んで、キスをして、SEXをする。会話をするようにキスをして、握手をするようにSEXをする。
SEXは親しくなるためのワンステップ。だから、自分としてはあまり肉体的な快楽を目的としていない。一晩一緒にすごすことで前日の夜は話せなかったことが、話せるようになったり、昨日はあまえてくれなかったのに、今日はあまえてくれたりするのがいいのだ。
それで、愛されてるんだなと安心する。なんて単純なぼく。
しかし、最近ひとつ困ったことがある。浮気の対象が女性だけに対してではなく、男性に対してもあるんじゃないかということである。
べつに、その筋の方ではないので、ケイン・コスギの肉体を見て興奮したり、銭湯の男湯で湯舟からあがれなくなったりなんてことはない。
だけど、日頃から格好いいな、なんて思っている男の友人と飲んだりすると、いつの間にかぼくの視線が彼の唇に吸いついてたりする。
いやいや、そんなはずはないと思っているのだが、酔えば酔うほど彼の体を触りたくなったりするから困ったものだ。
高校や大学の頃はなぜか、女装させられることが多かった。そして自分でいうのもなんだが女装が似合っていた。さらに、ゲイバーなんかに行けばその筋の方からも人気があった。加えて、電車の中で痴漢に何度かあったこともある。
(たぶん全部男の痴漢…)
しかし自分では、かたくなにホモでもゲイでもないと思っている。
かつてぼくには二人ゲイの友人がいた。一人はダンサーで、一人はソムリエ。
とくにソムリエとは仲がよくて、彼の彼氏についてよく話を聞かされた。恋愛の悩みは男女の恋愛の悩みとなんらかわりはなかった。ただ、世間的に認められにくいということや、好奇に満ちた目で見られることをのぞけば。
しかし、彼のなかでは女性を愛せないということはひとつのコンプレックスだった。
いつだったか「女性とつきあってSEXしようと頑張ってみたんだけど、たたなかったよ」と寂しそうに笑って話してくれたことがあった。
いや、だからなにが言いたいかっていうと、自分は幸せだなってこと。女性も愛せるし、男性もけっこう好きだし。
でも、この浮気症はなんとかしないといつまでたっても落ち着けないな。
あぁ、こんなぼくはやっぱりまだまだ結婚ができない。
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