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   Honey・Sweet・Pampkin - essey - vol.4  …by安藤ゆり
   
   ■ マリブミルク
 
サンフランシスコ滞在の目的は「留学」だったはず。
母親へ国際電話をかけるたびになんとなく罪悪感を感じながら過ごしていた。
その頃私がしていたことと言えば、どっぷり夜の生活に浸る毎日。
学校へ行くはずの時間を死んだように眠って過ごし、夕方から起きだしては夜遊びの支度をはじめるのだ。

違法のバイトもしていた。
日本人向けのクラブでのホステス。
ただでさえ留学生のバイトは違法なのに、飲酒の禁止されている未成年で、しかもアメリカでは許可されていない類の仕事。
見つかれば即強制送還という現実に多少ビクビクしながらも、バイトとクラブ通いで酔いっぱなしの毎日は楽しかった。

アメリカでクラブへ遊びに行くことは、女として自信をつけるには最適の場所かもしれない。そこでどれだけの視線を浴びるか、それだけが楽しみだった。
クラブへ出かける前、部屋でお酒を飲みながら女友達と思い切りめかしこむ時間の楽しさといったらなかなか味わえるものじゃない。
そして重低音が外まで響くクラブの階段を降りて行くときの緊張感。
そこに何となくたむろしている男の子たちの視線が痛いほど突き刺さるのを感じる心地よさ。興味や好意を持ったものには遠慮なく視線をぶつけるアメリカ人の癖は女子なら誰もがメロメロになってしまう習慣だ。

クラブへ入るとまずコートチェックで上着とバッグを預ける。
日本のコギレイなクラブのようにロッカールームなどほとんどない。
これから男の子と踊ろうという場所でバッグを抱えていてはあまりにもドン臭いので、お金はドリンク一杯ぶんのドルを胸と下着の間に挟みこむ。
二杯目からは誰かが買ってくれることを前提として。

コートチェックを終えたらバーへ。
いつも同じお酒を頼んだ。ココナツベースのマリブをミルクで割ってもらう。
お酒もお菓子も、甘いものが好きだ。
そしてあとはお酒を楽しみながら、うっとうしいほどにぶつけられる視線を一つ一つ観察していく。好みの男の子はいるかな、と。
自分から声を掛けに行く必要はないのだ。声をかけてほしい、その合図はただ視線を長く返すだけ。「Can I buy you a drink?」
お酒ごちそうしてもいい?それが定番の「はじめのひとこと」。
相手を変えたければ一度バスルームへ。そしてその行き帰りで声をかけてきた別の男の子と親しげにするだけのことだ。
なんとも便利なアメリカのナンパシステム。

何杯かお酒をおかわりしながら、男の子と踊って過ごす。
ここはもう自己陶酔で腰くねくねのセクシーダンスでも披露しなければかなりサムイ態度を取られる。
いかに自分をセクシーに見せているか、それがクラブで計られる「いい女度」だったりするのだ。どんなに色っぽい化粧をしていても、踊りがドン臭ければ笑われる。それが中学時代からダンスパーティーに慣れきっているアメリカの価値観だ。

けれど男の子の視線を浴びたくてものすごい気合を入れて行くくせに、そこで知り合った人と一緒にクラブを出ることはほとんどなかった。
日本人ばかりが集まるクラブではまた別の話だけれど、やっぱりここはアメリカ。
見ず知らずの外国人の車にいきなり乗り込む勇気はないのだ。
いい気分に酔いがまわり、お腹の空いた頃、一緒に来ていた友達とクラブを後にする。24時間のダイナーで夜食を取るのもまた楽しみだった。

今でもマリブミルクはあの頃を思い出す特別好きなカクテルだけれど、ほとんど口にすることはない。
楽しすぎたときだったから、懐かしむ勇気もない。
もう二度と戻れない時間だったから、戻りたいと思ってしまうのが怖い。
ただ、あの頃遊んでいた自分がもう少し大人だったら、とも思う。
アメリカのクラブで格好良く遊べる自分。そんなものに憧れていたけれど、そこで素敵な恋が始められるようになるには、もっともっと恋の経験値を積んで男の子を見る眼を充分に養っておかなければいけない。
きっとそれが大人の女で、あの頃憧れていたもの。
そして今でも、憧れ続けているものなのかもしれない。


 
【プロフィール】
安藤ゆり(あんどうゆり)ライター。
恋マガジン編集アシスタント、育児関連のエッセイ執筆などを経て、1月より
育児雑誌の編集の仕事を始める。
   
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